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個性ドリブン#4[香川大介]- シモツカレヤンキー コラボ企画 –

by しもジャパン
個性ドリブン香川大介

しもつかれにインスパイアされたアパレルブランド「SHIMOTSUKARE YANKEE(シモツカレヤンキー)」。

ただ洋服を販売するブランドではなく、しもつかれを「栃木の個性」と定義し、ローカルで個性を武器に生き抜く人を応援するするというブランドコンセプトがあります。

本企画「個性ドリブン」は、シモツカレヤンキーのブランドプロデューサーであり、栃木市のブランディングデザイナー、しもつかれブランド会議(SBM)代表の青栁徹が、これまでコラボレーションさせていただいたブランドや人物を「個性」を切り口に紹介する企画です。

第4回目は、同ブランドのロゴマークのイラストを担当された画家の「香川大介」さん。

その個性的な絵が生まれた経緯や活動に対する想いをうかがいました。

※取材時、栃木県下野市の居酒屋「源天 本店」さんの入り口の壁画を描かれている最中でした。

個性ドリブン香川大介壁画

「生活」を大事に

香川(以下:香):色々つくるんですが、物づくりが好きでずっとやっています。最近は大きな絵が続いて、今の源天さんでの壁画や都内でも。壁画が続きますね。

青(以下:青):香川さんといえば「画家」というイメージですが、絵以外の創作も多いですか?

香:工房と店舗も含めて自宅を3年くらいかけてつくりました。その間1年半くらいは絵を描いていません。プラス一時期パーティ料理を専門でやっていた時期もありました。

青:知らなかったです(笑)。幅広いですね。

香:「つくるもの」は何でも好きですね。粘土もやりますし。基本的に自分は画家だと思っていますけど、画家というポジションにこだわらずにつくっています。

青:創作活動全般が好きなんですね。多岐にわたる活動ですが、活動の軸になる大切にしていることはありますか?

香:僕の根本的な考え方は「生活を大事に」です。絵を描くこと、料理をすることなど何かつくることを特別なものにしたくないという思いがあって。朝起きて、掃除して、猫のトイレを掃除したりと朝のルーティーンがあって、お昼ご飯を食べて、子供と遊んで、寝るまでのその間生活があって。その中で絵を描く、物をつくることが並列してあるので、特別に物づくりのために集中するとか、何かを用意するということはしたくないし、しないようにしています。

青:自然にというかナチュラルに。

香:意識してやるというよりは、子供の頃からの延長なんです。実家が建具屋で廃材が身近にあるから、それを使って何かをつくることが日常で。今考えると特殊な環境だったのかもしれないけれど、その当時はそれが当たり前だった。遊びたくなったら何かをつくって遊ぶ。その延長が今になっています。

青:小さい頃の延長なんですね。その頃から絵も描いていたんですね。

香:絵は好きだったんですが、それより先に落ちている木で創作したりしてましたね。

青:やり方を教わったことはありましたか?

香:それはないですね。父が教えてくれたというよりは、カナヅチやノコギリを貸してくれたという感覚で。記憶がないだけで教えてもらったのかもしれないですけど。

青:物心つかないうちから創作していたと。

香:そうですね。そうした遊びが生活の一部だったんです。

青:学校で専門的に学んだことはありますか?

香:ないですね。小中高とほとんどバレーボールやってました。

青:バレーボールなんですか!意外です!実は僕もバレーボール部でした(笑)。

香:生活は変わらないんですよ。バレーボールか絵を描いているかだけで。今もそうです。

青:部活頑張ってたんですね。

香:小学4年生から初めて、中学生の時にVリーグができてプロになりたかったんです。大学に行ってバレーボールしようと思ってたんですが、高校2年生の時に「何か違う」と気が付いて。「これじゃないな」と。ものすごく好きだったんですが、それほど実力がなかったことを自覚して辞めました。9年間続けていたので挫折感が大きかったですが、意外とすんなり「自分には絵があった」と思い出せたんです。高校2年生の2学期からバレーボール部と美術部を掛け持ちするようにして、先生にデッサンを教えてもらって美大行こうと思っていたけれど、「行く必要ないな」と思ってやめました。
 それから19歳の時に目的があったわけじゃないけど東京には出ましたね。展覧会は開きたいとは思ってました。

青:東京はいつまで?

香:23歳くらいまで。そこからは歩き旅に2年出て、転々として日光にたどり着きました。

個性ドリブン香川大介

考えず、とりつくろわない

青:絵に香川さんらしさが出ていると思うんですが、今の独自のスタイルに行く着くにはどんな経緯があったんですか?

香:僕にとっては学校に行かなかったことが良かったと思っていて、人から教わることが得意ではなく、できるだけ自分で試しながらやりたいというのがあって。結構、遠回りはしているんです。色々な道具を試したり失敗も重ねたりしました。
 歩き旅をしている時にお寺に居候することが多かったんですが、所蔵している巻物などを見せていただいたりして学びになりました。旅の途中に習字道具一式をいただいたりもして、そこから墨を使い始めました。

青:確かに和のテイストというか、お寺っぽさはありますね。

香:当時はもっと日本画というか妖怪画でしたね。気持ち悪い時期が3年くらいありました。

青:(笑)気持ち悪いから脱却したのはどうして?

香:結構気持ち悪かったらしいんですが(笑)、変わったのは結婚してからですね。色が明るくなったねと言われるようになりました。やっぱり生活が露骨に出るんですよね。

青:絵の中でもこだわりのポイントはありますか?

香:最近は特に考えないようにしています。

青:考えない?

香:今回(源天)の壁画のようなものは、好き勝手に描いて良いものではないのでお店の在り方などを考えて描きます。今回は上手くいってるんですが、上手くいかない時は考えて格好良く描こうとしている時で、あまり面白いものにならない。経験的にあまり考えすぎると面白くならないなと。パフォーマンスで何も考えずに描くこともあるし、ひとりで描く時も頭で考えないことを大事にしています。

青:考えないレベルってあると思っていて、本当に空っぽで描いているのか、何か少しは考えているのか。どのレベルで描いているのかが気になります。手が自然に進む方向に任せるのか。どんな境地ですか?

香:言葉として「手に任せる」っていうのが最もしっくりきますが、何も考えなくても手の仕事の限界がある。「イメージはない」と言っていますが、イメージは日頃からしているので瞬間的に浮かぶんですよね。壁を見て瞬間的に自分の頭に思い浮かぶんですが、そのイメージをいざ平面に描こうとすると限界があるので考えずにやるんですが、、、何の話でしたっけ?(笑)。

青:(笑)どこまでイメージして描いているのかという質問でした(笑)。

香:そうでしたね(笑)。普段から頭の中でグルグルしているので、一旦それを消す感じです。

青:消すんですね。

香:普段からどうしても頭のどこかに残っているんですよね。それが無意識に出てくるのか、都合良く良い線になるのかは分かりませんが、普段の生活で蓄積したものを頭から消した時に自然と手の動きとして現れるのかなと。じゃないと説明がつかない時があって。口ではこう「何も考えないです」と言えるけど、本当に考えずに描くんですよ。それなのに後からつじつまが合うような形ができるんです。嘘ついているわけじゃなくて(笑)。描いて自然にできあがる時はそういう状態じゃないのかなと。

青:クセというか、出そうとしなくても自分の根っこの部分が自然と出てしまう。

香:とりつくろって見せようとするのとは違う部分で、やっぱり普段の生活の中から出るものがその人の個性なのかなと。それがたまたま僕はイメージとして見えるんです。
 高校で授業をするようになって生徒たちを見ていると、15、6年生きていてそれぞれ環境が違うので個性が違う。それが何から来るものかと考えると、やっぱりそれぞれの生活でしかないなと。

青:環境が大きいですよね。生まれてから今までの環境の影響が大きくて、その過程が全て繋がることによって個性になるのかなと。小さな頃から廃材が近くにあって、完成がない正解がないものをひたすら無心でつくっていたようなところから、今のスタイルに繋がってきているのかなと。誰かから習うよりも自分で試行錯誤しながら無心でつくるうちに、自分のやり方が自然とつくられるという気がしますね。
 ちなみにお子さんにもそういった環境を、と考えたりしますか?

香:たぶん放っておいてもそうなるんじゃないかなと(笑)。自分のやっていることが遊びの延長で、仕事と考えると完成させることは大事ですけど、子供の時はただつくっている過程が面白いんですよね。僕が子供の時は廃材がそばにあったけれど、彼は僕の工房で遊んでいると何らかの道具がたくさんあるので、使い方を教えなくても今も色々でいじってますね。本当はやめて欲しいけど(笑)。テレビも置いてないんですが、彼はそんなにテレビを欲さないんじゃないかと思いますね。他に面白いものがたくさんあるので。

青:今のお話とは正反対なんですけど、僕はデザインはロジカルに理詰めする作業だと思っていて、感覚でつくっちゃいけないと思っています。クライアントがデザインに対して目的があるので、ちゃんと結果を出すと考えると、できるだけ自分の感覚は抑えた方が良いなと思いつつ、さっき伺った通り抑えても最後に自分の感覚が出ちゃうんですよね。それくらいで良いかなと。出そうとしなくても結局自分がやっている以上は出ちゃうもんなんですよね。その部分が自分の個性なのかなと。
 香川さんのような自分らしい感覚を生み出すために必要なことってありますか?

香:一般的な意味での個性的とは僕は無縁だと思っていて、割と奇抜なことはしないんです。そいう意味では普通だと思ってます。
 僕は特別なことはせず、自分が持っているものをどこまで信じ切れるかが重要だと思っていて。見た目が個性的なものはいくらでもつくれるけど、そうじゃない本当の意味での個性は、やっぱりその人の「生活」の中からでしかないと。
 真摯に向き合うのであれば生活をちゃんとした方が良いのではと思います。だらしない部分もその人の個性として表現されてしまうから、そう見せたくないのであれば生活を見直せばいいし、だらしなさが個性であればそれはそれで大事にすれば良いかなと。

個性ドリブン香川大介

栃木の個性をキャラ化

青:シモツカレヤンキーの活動は側から見ていかがですか?

香:僕は基本的に無地なものが好きなので着れないなと(笑)。マスクは良いなと思ってます。でも活動は面白いと思ってますよ。

青:ありがとうございます(笑)。

香:栃木に来た時に「ちたけ」があって、これは使えるなと思って「ちたけちゃん」というキャラクターつくったんです(笑)。フィギュア化までして。栃木の人だけが異常に愛するきのこじゃないですか(笑)。なんでこんなに素晴らしい素材があるのにキャラクター化してないんだろうと思ってつくったんですよ。それと同じような目線なのかなと思ってます。でもしもつかれの方が圧倒的に個性強いでしょうけど(笑)。そういう意味では栃木って結構特殊ですよね。どうしてしもつかれが生まれたのか気になりますけどね(笑)。

個性ドリブン香川大介

対談を終えて:

青:飾らず、いつもの自然体でお話しされる香川さん。
「生活を大事に」とは、全てを普段の生活の延長として捉える。それこそが創作活動そのものであり、全てなんだなと感じました。
生活を普段として成り立たせるために、ルーティーンとも言える環境づくりする。そのいつもの自然な流れから生み出されるものこそが、香川さんの作風でありスタイルそのもの。
特別をつくらず日常から感じ、奇をてらわない。
一般的な個性とは無縁であることが、本当の個性なんだと思いました。

 

WEB:香川大介美術館

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