しもつかれにインスパイアされたアパレルブランド「シモツカレヤンキー」。コンセプトは「しもつかれの様な独特なクセがある事をネガティブと捉えられてしまう風潮に対し、クセが強いことを『個性』と定義し、『そこにある個性を応援する」」。
この企画「個性ドリブン」は、SHIMOTSUKAREYANKEEのブランドプロデューサーであり、栃木市のブランディングデザイナー、しもつかれブランド会議(SBM)代表の青栁徹氏が、ブランドコンセプトに添った「同調圧力に屈せず自分らしい個性を武器に生き抜こうとする人たち」を紹介してきます。
第1回目は、シモツカレヤンキーのモデルとして独自の世界観を放つ「NODAMO」さんと「個性」をテーマにした対談の様子をお届けします。
PROFILE:
NODAMO(18)
栃木県栃木市在住。文化服装学院1年。ASOBINEXT所属。
NODAMO
MODEL
人と同じじゃ嫌だ
青:ファッションにはいつから興味があった?
N:小学生の時から着る服を自分で決めていたし、こだわりもありました。自分なりにコーディネートも考えていた気もします。卒業文集にもデザイナーになりたいと書いていました。
青:小学生からとは凄い!「洋服」のどの部分に惹かれたと思う?
N:小学校3年の時からファッション雑誌を読み始めて、そこからさらに興味が深まりました。元々目立ちたがり屋なところはあって、学校に行く時も誰よりも可愛い格好をして登校しようと思っていました。既に、服に対してのプライドも自分なりにありました。今思い出すと恥ずかしいですけど(笑)。
その頃、初めて原宿に行きました。雑誌で見たバッグが欲しくて、売っているそのお店だけピンポイントで狙って行きました。
青:僕なんか友達と東京に洋服買いに行ったの高校生の時だった(笑)。その頃から個性的だと言われてたの?
N:言われてました(笑)。
青:流行とか時代の流れがある中で、自分の個性にフォーカスしていったのは何か背景がある?
N:「人と同じじゃ嫌だ」という気持ちが強くて。でも最近、人と違うだけじゃ個性じゃないという事に気が付いた。違いを求め過ぎて変に派手になり過ぎるのは違うなと。自分が好きなものを取り入れて、「新しいものを生み出す」みたいな感覚。小学生の時は目立ちたいだけだったかもしれないけど、今は「自分が納得するものを身に着けること」が自分自身のファッションスタイルになっている気がしています。
青:自分が好きな感覚をどうやって知ったの?
N:色から入る事が多いです。お気に入りの色が見つかるとその色しか見えなくなって、その色のコーデばかりになってしまう(笑)。
青:好みの色を基準にして洋服を選ぶんだね。
N:あと自分のファッションを一般的な「原宿系」「クール系」のような系統で括りたくない。私の友達は系統が決められず着る服を迷っていたりしているけれど、私は系統に縛られる必要は全くないなと。
青:確かに系統で縛ることで全体的にまとまるとは思うけど、どこかで見た様なものになりがち。そう考えると系統といった固定概念を外して、自分が面白いと思うものや自分が好きだとう感覚でチョイスすると自分らしさに繋がるよね。
N:だから「系統どうしよう」とか迷っている友達の感覚が理解できなくて。好きなのを着れば良いのにと。
青:みんな「私はこれが好き」という感覚が自分の中に無いのかもしれない。流行という情報に流されているのかも。
N:他人の目を気にしている感じもします。所属するモデル事務所からは「流行に踊らされるな」とアドバイスをいただき、最近はより流行を気にしなくなりました。
青:好みの軸が既に小学生の時に形成されていたから、自分の感覚で服を選ぶ事が当たり前なんだね。「流行ってるから」「みんなが着てるから」という価値判断ではなくて、「自分が着たいから」で選ぶ。多くの人は自分で選択しているつもりが、選ばされている事に気付いていない。だから自分がどういう服を着たいか問われると答えられない
カテゴリーはいらない
N:最近、個性派というカテゴリーも量産されている気がして。本当は、みんながなりたい自分になれば良いはずだけど、自分の感覚が無いから人のマネに走るんじゃないかと。私も全く気にしていない訳じゃないけれど、TPOが必要な時は合わせるくらいです。
青:自分自身の価値判断をするには、自分自身を知らなければいけない。そのためには、自分と対話する事が重要。「なぜこれが好きか」「なぜこれをやりたいか」を自分自身で判断することを積み重ねる事で自分を形成していく。小さな決定を自分自身ですることの繰り返しが個性を生む。
N:自分の個性を貫くことで周囲から認められれば良いかなと。
青:確かに周囲からの共感は大切だよね。自分を表現するという意味でも、ファッションは自分に合っていると?
N:そうですね。凄く好きです。
青:個性が際立つと良くも悪くも目立つから、ポジティブだけでなくネガティブに捉える人も多くなるはず。その辺の苦労や葛藤はある?
N:自分が好きなものを求め過ぎて、普通のものが物足りなく感じてしまうところはあります。
「これ買うなら自分で作る方が良い」と思うこともあって、専門学校で服飾を学びたいと進学しました。自分が好きなものを自分自身で作れたら最高だなと。
青:僕もデザイナーになる前は音楽をやっていた時代があって、DJを始めて数年経ったら、自分が流したい曲がなくなった。そうなると「自分で作るしかない」と曲作りをする事に。
シモツカレヤンキーも近いものがある。世界中に様々なブランドあるけれど大きな差異がなくなりつつある。その中で自分が着たいと思う、“ローカルならではのアパレル”にチャレンジしたいとオリジナルブランドを立ち上げた。ローカルで独自の世界観のあるアパレルブランドってあまりないし、しかもそれが郷土料理にインスパイアされて生まれた。考えてたら面白くなって。
飽きっぽいはポジティブ
青:個性を磨くために何かしてる?
N:洋服の系統を決めずに、広く見る様にしています。
青:当たり前をガン無視してるよね(笑)。「こうあるべき」って世の中にたくさんあるけれど、そんな事より自分自身の感覚を研ぎ澄ますために、「当たり前」という境界を越えて、自分の感覚にフィットするものだけでスタイルを形成しているところが面白いな。
N:「個性」って何かを改めて考えると、洋服単体での個性は世の中に溢れているから、やっぱり自分の性格になるのかなと。私は凄く飽きっぽい性格なので、好きな事にしか一直線になれなくて(笑)。飽きっぽいからすぐ次に行くんだけど、それを軸にして様々なことを深く知ったり学んだりができて、さらに、行った先でも深掘りする事ができる。
青:僕も別の業種の方と仕事をすると学びになる事が多い。それに新しいビジネスに繋がる可能性も増える。
青:僕も飽きっぽいから共感できる(笑)。「同じ事を長期に継続して凄いですね」と言われることも多くてSBMも足掛け4年続けているけど、僕が活動を継続するために必要な原動力は「刺激」や「新しさ」。次々と自分から新しい事にチャレンジする事で自分が飽きずに続けられる。自分で考えて新しい挑戦をするのは良いのだけれど、人に言われてやるのは面白くない(笑)。
N:人に言われたことはやりたくないです(笑)。
青:性格似ていてヤバイ(笑)。
N:似てますね(笑)飽きっぽいながらも、洋服・ファッションというカテゴリーで活動を継続しているということは、やっぱり好きだからだと思う。
青:飽きっぽいはネガティブに捉えられるけど僕は強みだと思っていて、飽きっぽいからこそ先に進むしかなくなる。自分を満足させるためには次に進むしかない。たまに気が付くと誰もついて来ていない場合もあるけど(笑)。でもそれくらいじゃないと個性と言えないのかもしれない。
N:どんどん先に進むから、色々な分野の人と繋がれる気がしていて。服飾の学校に入学したんですが、同じ夢を描く人を無駄にライバル視してしまうかもしれないので、他の学科の友達が増えたら良いなと思っています。
青:友達の作り方も戦略的だ。
N:お互いに学べるところがある関係が理想。同じ学科の友達も大切だけど、他の繋がりも大切。
青:僕も別の業種の方と仕事をすると学びになる事が多い。それに新しいビジネスに繋がる可能性も増える。
個性を応援するブランド
青:シモツカレヤンキーについてはどう感じている?
N:面白いと感じたのは、しもつかれが嫌われている部分を違う見せ方にしたり、ヤンキーという独自のカルチャーと組みわせたりとそこに自分を貫く姿勢が見えた部分。これらを組み合わせて「個性」として表現した事が、しもつかれらしさにピッタリだなと。「自分を貫く事によって嫌われる可能性もある」という現代の悩めるひとりの人間が見えてくる気がする。その部分があるから、「個性を応援するブランド」というメッセージに納得ができる。
青:服を選べない人がいるのも、ある意味ファッション業界からの同調圧力とも考えらる。世の中の流行がこうだから、それに添わないとダサいよみたいな圧力。NODAMOちゃんはその圧力をガン無視して自分自身を見つめ、自分の琴線に触れるものをひたすら探しまくって個性を強化している。NODAMOちゃんの様な個性を高めている人を応援し、活躍するフィールドを提供するブランドでありたいなと。ファッション業界だとモデルはシーズン毎に変更されるのが普通だけど、シモツカレヤンキーは個性を応援するブランドだから基本的にはモデルは変更しないつもり。むしろ一緒に洋服のデザインもしていきたい。
N:はい。ぜひお願いします。
まず県民が自分自身を問う
青:しもつかれとのエピソードは?
N:小中学校では、2月の節分の頃の給食に出ていました。毎年4月に配布される1年間の献立表を見て友達と「しもつかれ出るのいつ?」と探した。学校のしもつかれは、酒粕や鮭の頭が入っていないので食べやすくなっていて、私は普通に美味しく食べていました。本物はあまり食べた事がないです(笑)。日常的に食べるものとは思っていなくて、2月の行事の時に食べるという印象です。
青:確かに2月に食べるものではあるね。でも、奇しくも新型コロナウイルスの影響で世界中がオンラインでより深く繋がりつつある中、しもつかれをより県外の人たちに知ってもらうチャンスとも捉える事ができる。今こそシモツカレヤンキーも、栃木の伝統料理から生まれたアパレルブランドとして、国内外の方に知ってもらえる様なPRをしていきたい。それに、アパレルの価値自体の再構築が必要だと言われいる。ゴミを増やしてしまう様なシステムだったなど、業界も自分たちを問い直す機会になっている。シモツカレヤンキーはしもつかれの勿体無い精神を受け継いでいるから、絶対に売れ残りをゴミにしたくない。だから完全受注生産にしている。
N:シモツカレヤンキーのビジュアルは、独特な日本的な雰囲気が感じられるので好む外国人の方も多そうな気がします。
青:栃木県の可能性として思うところは?
N:平和で静かで、東京へのアクセスも良い。でも、その栃木の良さが他県に全く伝わっていない。
青:田舎ではあるけれど他県とは違った栃木らしさがあるはずで、まず県民が自分自身を問う必要がある。しもつかれも新しい切り取り方で、魅力的に見せようとチャレンジしている。
N:県民自信が、栃木をもっと深く知ることは必要ですよね。
青:もう一度、県民自体が栃木の素晴らしさを再発掘・再編集する事が重要。
上下関係なくパートナーとして
青:「みんなと同じじゃ存在する価値がない」というインスタの投稿が印象的だった。
N:量産型の自分にはなりたくない。モデル事務所に入ったのも、自分が作った服を売りたいと思った時に自分が着たいという思いが大きくて、モデルも経験した方が良いと考えてオーディションを受けました。自分の代わりは居ない事が理想で他のみんなと同じじゃダメだから、自分らしい個性を磨くしかないなと。お気に入りの言葉です(笑)。
青:僕も自分以外の人で代替できることは自分の価値にならない。「あなたにお願いしたい」と言ってもらえる事が最高の価値だと思っている。
N:私も自分の価値を高めていくために、シモツカレヤンキーに関わっていきたいと思っています。
青:そう言ってもらえると嬉しい。デザイナーとモデル、年上年下とか関係なく、対等な立場で、一緒に試行錯誤しながら新しいアパレル像を構築していこう。
N:はい。よろしくお願いします
3 コメント
飽きっぽさもポジティブになるこの記事。
是非ご覧いただきたいです。
NIDAMOちゃん、お若いのに 芯がしっかりしていて✨ファッションだけではない個性とは、を しっかり持っていて貫く姿に感動‼️
また、県民自体が栃木の素晴らしさを再発掘・再編集…共感しています🙋
そうなんです、すでに確固たる個性を持っていて素晴らしいんですよ〜
県民が自分たちを見直す機会になるように、個性に絞った記事にしていきたいと思っています!