世界で唯一無二の「しもつかれアレンジ料理家」として活動する川村葉子さんに、しもつかれアレンジ料理が生まれた背景や、その醍醐味を伺いました。
しもつかれが初めてでも、苦手な方も食べておいしく感じられる手軽なアレンジ料理「しもつかレシピ」をクックパッドに140以上公開。
しもつかれの季節には「しもつかれの作り方料理教室」「しもつかれアレンジ料理会」「県内大根品種別に作り食べ比べする料理教室」等を開催、講師を勤める。
その他、県内の保育園の栄養士・調理師向け研修会に登壇、時短しもつかれやアレンジレシピの提案をし、子どもたちが楽しくしもつかれを好きになれるよう、活動を重ねている。
Yoko Kawamura
川村 葉子
しもつかれを身近に感じてもらうためのアレンジ
2019年5月に、しもつかれアレンジ料理レシピのクックパッド公開数が100を超えました。
そのころ、記者さんから取材を受けたり、人とお会いしたときに、
「なぜアレンジ料理を作ろうと思ったのですか?」
「どうやって100種類も考えられたのですか?」
と質問を受けました。
私は飲食業界で約20年仕事をしてきました。
また野菜ソムリエプロとしてレシピを考案、講師としてレシピの作り方もレクチャーさせていただいています。
プロから初心者までたくさんのレシピを見てきて、レシピ案を100思いつくのはコツをつかめばそれほど難しいことではないと思っています。
ただ、その目的がはっきりしているときほど作り手自身も映し出されるので、レシピは面白いし、怖い側面もあります。
初年度のSBMでは「しもつかれの良さをより多くの方に知ってもらうにはどうしたらよいか?」を何度も議論しました。
その答えのひとつが、「しもつかれアレンジ料理」です。
しもつかれを知らない方に、普通においしく食べられることを体験して欲しい。
苦手な方にも、再度チャレンジして欲しい。
何なら知らずにうっかり食べて、「あれ?おいしいじゃん、しもつかれ」と思って欲しい。
そんな想いを胸に、しもつかれアレンジ料理を作り続けています。
私がしもつかれアレンジ料理を考案する際にポイントとしたのは、
しもつかれのマイナス要素をカバーすること
スーパーで購入できるものを材料に、毎日でも気軽に作れる簡単な手順であること
でした。
1. しもつかれのマイナス要素をカバーする
しもつかれを嫌いな理由は、見た目・におい・味のいずれかによる物理的なものや、子供のころに食べて苦手になった、給食で無理やり食べておいしくなかった、などと記憶に基づいた理由が多いです。
そこで初期のレシピでは「しもつかれ」の「見た目」をよくすること、「香り」をフォローすること、「味」をカバーする調理方法に注力しました。
例えば、最初のメニュー「しもつかれたまご炒飯」、ご飯にまぜて炒めてしまうので、見た目は普通の炒飯です。
香りも香ばしく、味はむしろほんのり「しもつかれ」の旨味が加わっている。奥深い出汁調味料を入れたようにコクがあり、栄養的にもたんぱく質・野菜のカリウムなどが入るためバランスが良くなり、「しもつかれ」のよさが前面に出せます。
物理的な要素は解決法もわかりやすいです。
また、新しい素材や調理法を使い、新しいおいしい料理として作ることで、食べやすいアレンジになると考えました。
ドーナツやケーキのレシピ。海外料理との組み合わせなどにもチャレンジしています。
「昔の思い出とは別ものだけど、これも「しもつかれ」のひとつなんだな」と感じてもらうことで、苦手なはずの「しもつかれ」を再評価する機会に繋がると思いました。
2. スーパーで気軽に購入でき、毎日でも気軽に作れる簡単な手順であること
「しもつかれを作るのは大変」と思っている方が多いので、「しもつかれ」をアレンジレシピとして考案する際に、できる限り手軽に調理できた方がチャレンジしてくる方が増えるのではと考えました。
郷土料理としての「しもつかれ」づくりは、かつては各家庭の冬の一大イベントででしたが、「時間がかかる」「体力的にきつい」「せっかく作っても家族がたべない」「たくさん作らないとおいしくできない」などから、家庭での作り手が減っています。このままでは各家庭の味が引き継がれず、途切れてしまうのはもったいないです。
しもつかれは各家庭や地域で材料も作り方も少しずつ違いますが、次世代に伝わる前に作るのをやめてしまうと、味が途切れてしまい、その後なかなか再現できません。
当たり前に食卓に並んで、「おいしいね」と食べて思えるものを作ること。
入手困難な材料で作ることや、難しい料理に挑戦することも楽しいですが、あまりハードルが高いものは、実際作られるレシピになるかというと、そうとも言えません。
毎日の生活の中で気軽に試せるレシピを目的とした場合、一回読んで理解し、すぐ試せるくらいがちょうど良いです。
「アレンジ」は辞書で引くと「変化を加える」こととあります。そして、変化の加え方は人それぞれのやり方で良いと思っています。
プロの料理人の一球入魂の緻密な料理もあれば、子供になんとか食べてほしくて頑張るお母さんの料理もある。
私自身もそうですし、みんなそれぞれ。社会情勢も変わって行きますので、「しもつかれ」も長い歴史のなかで、変化する部分がでてくる事は当然だと考えています。
アレンジを楽しんで欲しい
今回は私が考える「しもつかれアレンジ料理」の考え方を紹介させていただきましたが、多くの方がそれぞれの条件で様々な変化をさせて、みんなで楽しみ、あちこちで「しもつかれアレンジ料理」や「アレンジ料理」が広がれば良いと思います。
私も、毎日手軽に作れるものとは別の条件での、新しいアレンジも楽しみたいと考えています。
みんなの心の中に浮かぶ「しもつかれ」と「しもつかれアレンジ料理」が、「おいしくて奥深いちょっと自慢の料理」として存在し続けてくれたら、とても嬉しいです。