［特集］器と薬膳と、しもつかれと。｜gallery HANNA

器の向こうには食、食の向こうには健やかさがある

宇都宮市市街地。大通りから少し入った小さな住宅群の一角に、時がゆるりと流れる築約90年の日本家屋が佇みます。「Gallery HANNA～絆和～」。鹿沼市出身のトーマスあす子さんが約12年前から、陶器や漆、染色、書、服飾小物など多彩な”美しい手しごと”に触れられる企画展を毎月展開しています。

用の美を象徴するかのような、趣ある家屋の一室で2月8日、中国古来の薬膳を切り口にしもつかれを紐解き、器で彩り、愛で、味わう体験講座「HANNA×薬膳教室」が開催されます。

講師を務めるのは、宇都宮市内で原木椎茸とワインを生産している農家で、「里山と人をつなぐ」をコンセプトに「薬膳教室　Hinoeの森」を主宰する吉村慎子さんです。

それぞれの視点で健やかさを育み、深め、伝える２人による「しもつかれ×薬膳」さらに、「×器」という1日限りの特別講座になります。

あす子さん　「日々の道具で健やかさを感じてみたい方にぜひ参加していただきたいです」

吉村さん　「しもつかれの栄養価や効果効用、薬膳の目線から郷土料理を見つめて、先人の思いに心を寄せ、自分を労る事を学んでいただけたらと思います」

講座概要

自己紹介を含めた薬膳について
しもつかれと同じ材料で酒粕汁（大滝の日光サーモンを使用）をデモンストレーション
しもつかれの薬膳的効能などの講話
あす子さんセレクトの器と合わせて、試食
自宅で使える醤油酒粕の作成
解散

空間の力、器の力　健やかさを感じるセンス　gallery HANNA

昔ながらの日本家屋。昭和時代を生きた家は健やかで、優しく、逞しい。

HANNAを営む家は、アニメ映画監督宮崎駿氏の疎開先としても知られています。

13年前。あす子さんは、住居として古民家を探す最中、知人の紹介で現在ギャラリーを営むこの家に出合いました。

会社員としてギャラリー運営に携わっていましたが退職した直後。仕事、人間関係など、「悩み、落ち込み、寝込むことも多かった時期」だったそうですが、家主の「文化的な活用を」という要望、夫の「アートに関わる仕事をしているとき、君はすごく楽しそう」という言葉に背中を押され、ハンナを立ち上げました。

ある意味、あす子さんに新たな命、使命を吹き込んだ家なのかもしれません。

家が呼吸していることを感じる

日本の昔ながらの家屋は、畳やふすま、漆喰・珪藻土などの日本の自然素材を使った、日本の気候に適した住居と言われています。

あす子さん「漆喰は冬乾いて、夏は湿度を蓄える。しかも、自然由来の、長く使える素材しか使っていないから効果が薄れるものがない。家自体が生きているんですよね。ここに居ると『健やかという言葉が似合う家だな』『自分が健康でいないとこの家についていけないな』としみじみ思うの」

さらに、「ギャラリーとして、場の力がある」と言います。　

あす子さん「最初に私、ギャラリーをやるならホワイトキューブ以外で挑戦したいと思っていた。面白味のある空間の方が人も来て楽しいし、滞在時間が長くなり、作品もゆっくり観てもらえる気がしていたの。で、ここの家に出合った。

作家さんも、作品の見え方が変わることを楽しんでくださる。『この空間だから次はこういうテーマにしたい』と言ってくれる方も。この家に感謝することは、本当に多いですね」

用の美を顕在化した、イマジネーションを育む空間で、昨年、薬膳教室は「健やかさ」をテーマに始まりました。

HANNA×薬膳教室、器、空間×食、健康

吉村さんは、のどかな景色の広がる宇都宮市新里町で夫潔さん、愛犬せんちゃんと原木椎茸とワインを作っています。

「郷土で育った葡萄の個性を最大限に生かし、この土地で採れた食材の料理に合うワインを作りたい」「農村地帯にもう一度活気を取り戻したい」と、椎茸の原木は里山から伐りだし、昔ながらの製法で育て、醸造用葡萄は耕作断念地を借り受けて耕すなど、循環型農業を実践。そして、〝里山と人は互いに支え合う合うものであり、人も自然の一部〟という身土不二の考えを元に、約3年前から、「薬膳教室　Hinoeの森」を開いています。

あす子さん「古くから伝わるもの、自然なものは無理がなく、健やか。食も同じで、【器＝食、食＝健康】　と考えていた時に吉村さんと出会い、食器という料理と人をつなぐモノを扱っているギャラリーで里山とヒトを繋いでみませんか、とお誘いしました」

それぞれの視点で「健やかさ」を伝えたい。思いが重なり、「HANNA×薬膳教室」は始まりました。

テーマは「器と食と健やかさ」。2023年1月の第1回以降、薬膳茶的温活、薬膳的体質判断、自分を労わる薬膳酒（茶）づくりなど計5回開催してきました

吉村さんが二十四節気に応じたテーマを考え、テーやワークショップで作る料理に応じた器をあす子さんが提案します。体を労わる食、食事について楽しく学び、盛り付ける器を考え、食卓を彩る心を育む教室は二人ならでは。「毎回すごく楽しい」とあす子さんは声を弾ませます。

特別講座「しもつかれ×薬膳教室」

Gallery HANNAは、2年に一度の企画展「巡るこ～ひ～展」開催の折に「しもつかれウィーク」に参加し、今回で3回目のコラボレーションになります。

同展は、陶・紙・木・漆・金工など10名以上の作家による珈琲時間を彩る器が並び、県内各地から珈琲スペシャリスト達が日替わりでカフェをオープン。ギャラリーを知るきっかけにしたいと約10年前から開催している人気企画展です。ウィーク参加の年は、しもつかれブランド会議（SBM）メンバー、菓子工房こぶしの「しもつかれビスコッティ」を会場でご提供いただいていました。

今回は企画展期間内に薬膳教室とコラボレーション。吉村さんならではの視点でしもつかれの栄養、風習にさらにフォーカスし、あす子さんがしもつかれ、酒粕汁にあった器を見立てます。

吉村さん「しもつかれと同じ食材で酒粕汁を作り、私の好きな〝冷たい〟しもつかれと共に試食していただきます。また、『七軒分のしもつかれを食べると風邪をひかない』に習い、参加者数名にしもつかれをお持ちいただく予定です。個性あふれるしもつかれを『お稲荷さんにお赤飯と共に備える』という風習に合わせてお赤飯と味わいたいと思います」

あす子さん「私は、しもつかれが大好き！で、SBMの『古きものを大切にする』という理念にも共感。私も日本文化に関わる者として使命を感じています。それに、青栁代表の『しもつかれも器次第で見え方が抜群に美しくなる』という言葉もうれしかった。

企画展も開催中なのでコーヒーにまつわる器もご覧いただけます。日本の器文化の素晴らしさ、器で暮らしを彩る心の豊かさを感じていただくきっかけにしていただければ」

食事、食材、食材を育む森、日本古来の家、空間、器の力が共創し、新たな…、いや、しもつかれが本来持つ食、栄養、文化的な本質、そして、美しさに出合えるひとときになるかもしれません。

ご参加お待ちしております。

※本記事はタイアップ記事（Cプラン）です